この記事では、エアコンが冷えなくなってしまった時に、DIYでガス補充して修理する方法を解説します。
そろそろ暑くなって来たし、エアコンを使おうと思ったら、冷えない事に気付いてお困りでしょうか?
エアコンをつけてもなんだか風が冷たくない?もしかして故障?
最近の夏は猛暑が多いので、もはやエアコンは生活必需品と言えます。
そのエアコンが冷えないとなると、すぐになんとかしなくては!と思いますよね。
業者はすぐ来てくれないかもしれない、
高いかもしれない、
という時にDIYで修理する方法があれば役に立つだろうという事で本記事にしました。
エアコン修理、取り付け業者である筆者が解説します。
正直な所、ガス補充の作業はDIYでやるには少し難しい&注意が必要な作業もあるので、公開するか迷いました。
ですが、
ひとつの選択肢として何か役に立てば、と公開することにしました。
はじめに(注意点)
この記事に書いてあるDIY方法を実行する場合、よく読んで手順を間違えない様にしてください。
もし難しそうだったら無理せずに業者に依頼してほしいと思います。
必要な物を揃えると約5万円の費用がかかります。
エアコン1台を1回だけ直すのだったら正直コスパはあまりよくありません。
2台、3台と直す場合は費用が安くなるかもしれません。
今後DIYで出来る様にしたい!という場合もDIY方法を覚えるのはありです。
業者さんに頼むとしても、手順を理解していれば色々メリットになる!
エアコンが冷えない時の原因
エアコンが冷えない時に考えられる原因を最初に説明します。
下記の様に、冷えない時は様々な原因が考えられます。
原因一覧
- 操作ミス
- フィルター、内部の汚れ
- 周辺の障害物
- 一時的なエラー
- 冷媒ガス漏れ
- 冷媒回路の故障
- サーミスタ(温度センサー)の故障
- 電子基板の故障
本記事ではこの中の、『冷媒ガス漏れ』について修理方法を解説していきます。
冷えない=すべて冷媒ガス漏れではない事に注意!
※他の原因と修理方法については、エアコンが故障?冷えない、効かない原因8選と修理方法で解説しています。
使用工具・資材
使用する工具や資材を紹介します。
それぞれAmazonで市販されている、一般の方でも入手可能な物を選んでいます。
プロ用で揃えようと思ったらもっと費用がかかってしまうので、最低限で問題無さそうな物を選んでなるべく費用がかからない様にしています。
総費用の概算は約5万円です。
ゲージマニホールド
ガスの圧力計測に使用
R410冷媒ガス
補充するガス※エアコンで使用している物に合わせる
R32冷媒ガス
補充するガス※エアコンで使用している物に合わせる
真空ポンプ
エアコン内部と配管を真空感想するのに使用
デジタルはかり
補充するガスの量を計測するのに使用
チャージホース
エアコン、ガスボンベ等を接続するのに使用
チャージバルブ
チャージホースとエアコンの接続に使用
モンキーレンチ
バルブキャップなどの開け閉めに使用
プラスドライバー
室外機カバーの開け閉めに使用
六角レンチ
バルブ操作に使用
項目 | 金額 |
---|---|
ゲージマニホールド | 7,558円 |
(R410冷媒ガス) | (14,500円) |
(R32冷媒ガス) | (19,000円) |
※冷媒ガスはどちらかを購入 | ー |
真空ポンプ | 9,999円 |
デジタルはかり | 3,880円 |
チャージホース | 3,680円 |
チャージバルブ | 3,628円 |
モンキーレンチ | 1,782円 |
プラスドライバー | 460円 |
六角レンチ | 1,291円 |
合計 | 約47,000円~50,000円 |
総費用としては5万円弱となっています。
これをどう捉えるかはそれぞれですが、費用だけで見ると修理業者に頼んだ方が安くはなります。
ガスの種類と量
最初に、エアコンで使用されるガスについて解説します。
補充する冷媒ガスには、種類と量が決められています。
上の写真の様に、主に室外機の横のシールに書いてありますので、確認しておきましょう。
この場合、ガスの種類は『R410A』なので、R410Aのガスを購入して使用しましょう。
必要なガスの量は0.74Kg=740gとなります。
現行のエアコンはR32かR410がほとんどです。
それ以外のガスを使用している場合は、ガスの入手が難しいのと、かなり昔のエアコンになり他の部分の故障の可能性が高いので、修理はあまりおすすめしません。
ガス補充の作業
必要な準備が出来たら、いよいよガス補充の作業についてです。
注意点
エアコンに使用するガスは、微燃性といって火に直接あてると燃えるガスとなります。
また燃えると人体に有害な物質となりますので火器に近づけない様にしましょう。
また吸い込むのも体には良くないので出来るだけ吸わない様にしましょう。
ガスの取り扱いや補充の手順を誤ると、爆発やエアコンが破損する可能性があります。
十分に注意して作業しましょう。
室外機カバーの取り外し
最初に室外機の側面にあるカバーを外していきます。
カバーを止めているネジをゆるめて外しましょう。1箇所の場合もあれば、2,3箇所ある場合もあります。
ネジが外れたら、下にスライドしてカバーを外しましょう。
固い事もあるので少し力が必要です。
カバーが外れてこの様に中身が見えたらOKです。
赤丸の部分からガス補充をしていきます。
ゲージマニホールドの接続
次にエアコンとゲージマニホールドを接続してきます。
いくつかナットがありますが、赤丸している部分が、『サービスポート』と言ってガス補充などを行う部分です。
ここのナットをモンキーレンチで反時計周りに回して外しましょう。
この様に外れたらOKです。
サービスポートについて
サービスポートについて、中央の部分を覗いてみると、ピンの様な物が見えます。
このピンは、押し込むとその間だけバルブが開きます。
なぜこの様になっているかと言うと、チャージバルブを接続した時にガスの出し入れが出来る様にです。
サービスポートに接続するチャージバルブの中央を覗いてみるとこちらにも同じ様にピンがあります。
つまりチャージバルブのピンを押し込んだ時だけガスが流れるので、ガスを漏らさずに作業が出来る構造になっています。
接続する前にゲージマニホールドはこの様な状態にしましょう。
色分けがありますが、自分で間違えなければ何色でも構いません。
ゲージマニホールドの中央にあるバルブは、最初は真上に向けておきましょう、右や左にするとその方向にガスが流れてしまいます。
ゲージマニホールドのバルブ切り替えについて
ゲージマニホールドの中央にあるバルブは、矢印の向きを切り替える事で流れる向きを切り替えます。
こちらは矢印を上に向けた状態です。
この状態では、圧力計まではガスが流れますが、右と左(黄色いホースと青いホース)には流れません。
こちらは矢印を右に向けた状態です。
この状態では、圧力計と、右側の青いホースに流れます。
こうするタイミングとしては、真空ポンプを使用して真空引きする時です。
こちらは矢印を左に向けた状態です。
この状態では、圧力計と、左側の黄色いホースに流れます。
こうするタイミングとしては、ガスボンベを接続してガス補充をする時です。
チャージバルブに接続するホースとチャージバルブを写真の様に接続しましょう。
接続する前に、チャージバルブの後ろのつまみを反時計回りに回しましょう。
ここを回すと、先ほど説明している通り、チャージバルブ中央にあるピンが出る様になっているので、そうならない様に反時計回りに回してピンを引っ込めておきます。
最初からピンが出た状態で接続すると、いきなりガスが出てくる可能性があります。
この様になったら接続は完了です。
ガス残量の確認
接続が出来たら、最初にガスが入っているかを計測しましょう。
先ほど、反時計回りに回しておいたチャージバルブの後ろのつまみを時計回りに回して、ピンを押し込んであげます。
そうしたら、次はゲージマニホールドに付いた圧力計の数値を確認しましょう。
ポイント
針が全く動かず0のままだったら、ガスが空になっています。
0.5より下にある様であればガスは少なくなっている可能性があります。
1.0前後の場合は十分入っている可能性があります。
圧力計での計測は目安で、実際の規定量である○○○g入っているかは数値は測る事が出来ないので、代わりに圧力で大体の目安を付けます。
※ここでの圧力はエアコンが動いていない時の物です。動いている時は圧力が低くなるので数値が変わります。
圧力計の数値によってこの先の対応が変わります。
1.0以上ある場合は、ガスは結構な量入っているので、もしかしたらガスは不足しておらず、他の部分の故障かもしれません。
それ以外の場合は、ガスが減っている可能性が高いので、ガス補充をすれば直るかもしれません。
※ただし、0になっている場合は、漏れ出している原因も直さないとまたすぐに空になってしまう可能性があります。
真空引き
次はガスを補充する前に真空引きしましょう。
真空引きとは、エアコンの内部にある空気を無くし真空状態にする事です。
これをやらないとガスがしっかり補充出来なかったり、空気に含まれた水分でエアコンが故障するのを防ぎます。
本来はエアコンの内部と配管の中を全て真空にするのが真空引きですが、ガスが残っている場合は真空引きが出来ません。
残ったガスを専用の装置で回収する方法もありますが、それはDIYでは現実的ではありません。
ですので、ここではDIYの前提で割り切って、ガスが0の場合のみ真空引きの作業を説明します。
※ガスが少し残っていそうな場合は次のガス補充まで項目を読み進めてください。
写真の様にゲージマニホールドと真空ポンプを接続します。
接続が出来たら、先に説明した通り、ゲージマニホールドの切り替えバルブを右に回します。
この状態で真空ポンプを稼動して20分程度稼動しましょう。(長くやるだけしっかり真空状態を作れます)
ガス補充
真空引きが出来たら、ガス補充を行います。
ガスについては、少なすぎず多すぎず規定量に合わせる事が重要です。
もっと効かせたいと多めに入れると意味が無いばかりかエアコンが故障します。
ガスボンベゲージマニホールドを接続
チャージホースのまだ使っていない残り1本を冷媒ガスのボンベに接続しましょう。
接続が出来たら、ゲージマニホールドの切り替えバルブを今度は左に回します。
はかりを見ながらガスを入れていく
ガスが残っている場合
ガスがまだ残っている場合、残っているガスの重さがわからないので、規定量に対してどれぐらい入れて良いのかわかりません。
その場合は、圧力計の数値とはかりの数値を両方見て、冷え具合を確認しながらガスを入れていきます。
- 圧力が0.4が最初の状態だったら、0.8になるまで入れてみる。
- 入れすぎていないかはかりの数値を確認する(規定量が740gなのでそれを超えるのはNG)
- エアコンを動かして冷え具合を確認してみる
といった具合にこまめに確認しながら、入れすぎない様に気を付けながら補充してきます。
ちなみにガス補充はガスを空にしてから行うのが基本ですので、これはイレギュラーな方法として理解してください。
※DIYで行う前提でこの様な説明になってしまって申し訳ありません。
ガスボンベの接続が出来たら、ガスを規定量まではかりを確認しながら入れていきます。
今回のエアコンだと、規定量は740gなので、そこを目指して入れていきます。
ガスボンベをはかりに載せたら、「ゼロ」のボタンを押して数値をゼロにしましょう。
次にガスボンベの上についてバルブを緩めてガスを入れていきましょう。
あまり急激に入れるとエアコン側のバルブが壊れるので、1秒に10グラムぐらいで少しづつ入れましょう。
数値はー(マイナス)で表示されます。この場合ー68gとなります。
※ガスボンベから68g抜けた=エアコンに68g入った、という事を表します。
少しづつ入れていきます。
途中で、ガスの入りが悪くなる事があります。
その場合は、エアコン電源を入れて冷房をかけながらやるとまた入り出します。
一旦、ガスボンベのバルブを閉めて、それから電源を入れに行きましょう。
※エアコンが動き出すとガスが一気に入り出すので、開けたままだと室外機に戻った時にものすごい入ってしまっていたという事になります。
規定量に対して30g~40g少ない程度までガスが入ったら、そこで補充をやめます。(理由は後程説明)
ガスボンベのバルブを時計方向にしっかり締めてガスが出て行かない様にしましょう。
試運転
ここまで出来たら、室内に行きエアコンの試運転を行います。
冷房をしばらく動かしてみて、冷たい風が出始めたらOKです。
これで完了。といきたい所ですが、少しだけ残りの作業があります。
ホースに残ったガス回収
実はこの状態だとチャージホースにはまだガスが残ったままです。
このままホースを外すとガスが噴き出して危険なので、残ったガスを回収します。
※先ほど、規定量に対して少し少ないタイミングで止めたのはこれが理由です。
冷房を動かしたまま、また室外機の方で作業を行います。
詳しい説明は省略しますが、負圧を利用してガスを回収します。
ガスを回収するには、三方弁の開閉で行います。
上の写真で六角レンチを指している部分の三方弁を時計回りに止まるところまで回して締めます。
三方弁は上下に高圧側と低圧側の二つありますが、高圧側の一つだけ使用します。
※高圧側と低圧側の見分け方は、繋がっている配管の太さで判断できます。
配管の細い方が高圧側です。これを間違えるとエアコン故障や破裂の可能性もあるので絶対に間違えない様にしましょう。
もう一度言いますが配管の細い方が高圧側です。
高圧側の三方弁を締めると、しばらくするとガスが回収され始めて、圧力計の針が下がってきます。
これが、ホースに残ったガスの圧力を示しているので、0になったという事は残ったガスが回収された事を意味します。
0になったら、チャージバルブの後ろのつまみを反時計回りに回して、ピンを戻します。
これで、ホースとエアコンの間にはもうガスが流れない様になります。
ここで先ほど締めた高圧側の三方弁を反時計回りに回して元に戻します。
これを忘れるとガスの流れが遮断されたままなので、室内側のエアコンにガスが流れないので冷えません。
後仕舞い、復旧
ここまで出来たら、ほぼ作業は完了です。
外していた六角のキャップを付けたりして後片付けしていきます。
キャップを締める時の強さについては、手で絞めただけでは不十分です。(ここからガスが漏れる事もあります)
専用の工具を使わないと数値は伝えらえないので感覚で説明すると、手で絞めた後に、モンキーレンチで10度ぐらいグっとやるイメージです。
カバーなど外した部品を元に戻したら作業は完了です。念のためエアコンが冷えているか最後にもう一度確認しましょう。
まとめ
今回はエアコンが冷えない時にDIYでガス補充をする方法について解説しました。
最初に書いた通り、工程も多く作業も危険性もあるので公開を迷いましたが、DIY情報を発信する当ブログとして、何かの参考になればと思い本記事を公開しました。
そして、ガスを補充する方法について解説をしたものの、実際にはガスが漏れた原因を修理しないとまた漏れてしまう事があります。
※というより、少なからず漏れているはずです。そのペースが数日なのか数年なのかはそれぞれです。
これに関しては、DIYでの診断に限界があるのと修理方法も難易度が上がるので今回は触れていません。
ガスは約10kgのボンベを紹介したので、残ったガスでまた補充する事も可能なので、DIYではそう割り切るのも一つの手です。
ただし、もしここまで読んだけれどやっぱり難しそう、約5万円の費用をかけてまで失敗したくない、という方はやらない事をおすすめします。
業者に頼めばガス補充のみであれば2,3万円あれば出来ますので、今回解説した手順を知った上で業者に依頼するというのもありだと思います。
エアコンのトラブル全般に関してはこちらの記事もおすすめです